Stop Being Salty

勉強の記録

2022/8/2(火)

読むべき本と論文を読み、その合間に読みたい本を読むという、幸せないちにちだった。夏の暑さには耐えられないが、夕焼け空に映える雲が綺麗だということだけは夏のよいところだね。

彩瀬まる『不在』(角川文庫、2021年)を読んだ。面白く読んだが、私には読む視点を設定しにくかった。

  • おそらく、「愛っていうのは、気持ちの悪い言葉だよ。使われるのは、基本的にそうじゃないものをそう見せようとするときだ。そしてその意味はどれだけ表現を変えたって、突き詰めれば誰かに干渉したいってことだ」という一節がもっとも力をもっている(p. 218)。何が愛なのか、という問いを主人公(と読者)に投げかけ続けたうえでの、答え合わせという性格をもつ台詞だからだ。この言葉が説得的に響くように物語が組み立てられている。

  • 語り手である主人公からみた他の登場人物にたいする評価が、余白なく丁寧に描かれている。兄以外の登場人物は、主人公にとっての立ち位置が変化するか、主人公の予想を超える行動をとる。その意味では、兄の存在が本作を読むうえで重要なのかもしれない。

  • 台詞の位置づけにせよ、登場人物の立ち位置にせよ、丁寧につくられているがゆえに読み方が固定されており、作品が読者に開かれていないように感じてしまう。以前、著者の『あのひとは蜘蛛を潰せない』を手に取ったが、途中で読むのを止めてしまったことがある。丁寧につくられているということは、読みやすさを生むと同時に、頭を使わずに読めてしまうということでもある。